シナモンのグリューヴァインや君を待つ 柳下
揺れる灯影の恋のシュトレン まんだら
市役所のからくり時計鳴り初めて 柳
尖塔の先雲は流れる ら
緑茶飲む煙突掃除のマイスター 柳
ここは天上月もけむたげ ら
ウ
桐一葉三千世界秋が来た ら
四十七士は朝鈴を聞き 柳
入り組んだ意味の迷路を抜けきれず ら
白き鯨の挑む海底 柳
蒼穹ニ昇レバ則チ龍トナル ら
デモの上着を脱いで花見に 柳
不都合な春は御苑の門を閉じ ら
急に集まる聞香の友 柳
逸品をクリスティーズで競りかった ら
月と蛇踏むマリア立像 柳
ボサノバにのってビキニが浜を行く ら
水風船のぽんぽん弾け 柳
2オ
中世の町をぐるりと囲む壁 柳
火あぶりもあり八つ裂きもあり ら
日曜は竹葉亭のうな重を 柳
自腹切りすぎ背負う借金 ら
秋空を飛ぶ絨毯に医者と娘と 柳
玄月なかば病めるスルタン ら
竪琴の青き十六夜閨に落ち 柳
溺れるままにうたかたの夢 ら
志ん朝と小さんの子ぼめ聞こえ来る 柳
扇を閉じてしばし逡巡 ら
オソルノにドロップアウトして暮らそ 柳
山の麓の古い酒蔵 ら
名ウ
ふるさとの花おもわせて春の軒 ら
朧の中を挨拶に寄り 柳